知らないと損をする求人情報の読み解き方:収入編

企業が求人を公開し職業安定所や求人媒体で募集を行う場合、様々なルールがある事はご存知ですか?

求職者に誤解を与えないような情報の記載が求められるほか、絶対に記載しなければならない情報等もあります。そして、現在のような情報過多、人手不足の状態になると各企業とも様々な募集の方法で自社の求人情報に工夫を凝らすようになります。

求職者としては、企業の発信している求人情報を正しく読み解く事が、間違いない転職の第一歩にもなるはずです。

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収入表記の読み解き方

仕事を探される人なら誰でも、給与額は気になる事でしょう。

給与の単位で企業が用いるのは、時給・日給・月給である場合が殆どです。ですが、求人情報を見ていると月収・年収という記載も多くある事に気が付くはずです。

月給と月収の違い

正社員職であれは、月単位で給与額を定める場合が圧倒的に多いのは承知のことと思います。

では、月の単位で収入を表すのになぜ月給と月収があるのでしょう?良くある勘違いに「月収は総支給で、月給は税金等を引かれた後の金額」と思われている方がいますが、実はどちらも税金・保険等の控除前の金額です。

何が違うのでしょうか。

月給は定められた勤務時間を就業した際に、最低限約束される月単位の給与です。これに対し、月収は、残業や深夜手当など勤務状況によって変化する手当等を含んだ収入の事になります。

簡単に言ってしまえば「仕事がある時に頑張ればこれだけ稼げますよ」と言っている訳です。その為、残業等が無い月の収入までは約束していません。

求人情報を公開する場合、企業は月給(又は時給や日給)等の最低限定められた単位での給与額を表示する事を求められます。しかし、なるべく高収入で有る方が、応募者の反応が良いのは必然ですから、月収例のような内容を併記するのが一般的で、年収等も賞与額を含んで表記するようにもなっています。

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収入表記に注意したい求人情報

例えば、次のような求人情報を見つけた場合どう思われますか?

営業職正社員募集

未経験からでも月収35万円以上だって稼げます!!

お仕事内容:○○の販売・営業
給与:
 月給255,000円以上+各種手当+インセンティブ
 ※月給には定額固定残業(45H分を含み、超過の場合は別途支給)

収入例)
 昨年度実績:営業部員の平均年収700万円以上
 入社2年目先輩の昨年実績7,120,000円(月収平均48.7万円)
 月給255,000円+賞与1,275,000円+インセンティブ2,785,000円

[以下、応募要項等]

上記例の求人は、実際にインターネットの大手求人サイトに有名企業が掲載してた内容を参考に作成した物となります(2021.3月時点。勤務地:東京)。

特に収入例として昨年実績などと記載があれば、営業職でガッツリ稼ぎたい!と思っている方は「アリだな」と感じる人もいるのではないでしょうか。逆に営業に自信が無い方は、「実績とは言っても自分もこんなに稼ぐのは難しいかも。インセンティブが大きすぎる」と感じるかも知れません。

その中間に位置される方。「インセンティブが半分でも月収37万円以上、インセンティブがゼロだって年収430万円。更に賞与が半分でも年収370万円以上なら悪くないかも」そんな風に思ったら要注意です。

収入分析:月給の時給換算

結論を言うと、上記の広告は営業職として十分に自信のある方、または時給1,180円+残業45時間の勤務で25.5万円の給与を得たいと考えられる人以外にはおススメしません。

何故なら、まず月給ですが募集上では「定額固定残業45Hを含み」と記載があります。これは、45時間の残業分賃金は255,000円に含まれているという事を表しています。

そこで計算をしてみると、残業45時間分の手当を除く定時間分の給与が188,800円。月間の労働時間を160時間で定めてある場合、時給1180円になりますので残業時給が1.25倍として1,475円×45時間=66,375円。

基本給188,800円+残業45時間66,375円=255,175円という事になります。

月給以外のポイント

実際には、45時間以上の残業は年間6回までと法令で定められ、定額固定残業を設ける場合でも設定時間を超過した場合には追加支給の義務があります。

募集上も45時間を超過した場合には別途支給と記載がありますので、ルールを守って運用された場合には問題になるような物ではありません。勤務する限り最低255,000円の給与は保証するとも言っている訳です。

ですが、2021年3月時の東京の最低賃金が1,013円である事を考えると収入に魅力を感じられる人は多く無いかも知れません。

また各種手当は、45時間を超過した場合の時間外手当や深夜手当。また、交通費、家族手当、役職手当として全社員が対象とはならない物である場合も多い事を理解しましょう。

そして、賞与とインセンティブ

まず、インセンティブの比重が大きいのは、それだけ成約に労力が伴うと想像する事も出来ます。上記例では20日勤務の場合で一日あたり11,604円のインセンティブを得ている計算になりますが、会社によっては「連続で達成の場合、インセンティブ額が〇%加算」等のルールを持っている会社もあります。

更に、販売実績によりインセンティブを決めるルールを運用しているのであれば、当然、賞与考課等においても成果主義の反映があると考えられます。

インセンティブや賞与の比重が高い企業では、当然その収入的な魅力から大いに活躍し高額の給与を得ている人も多くいます。

半面、インセンティブを得られず、賞与考課においても成果主義の原則から大きく差がつく事も珍しくありません。月給255,000円+賞与1か月分=年収3,315,000円の社員と年収10,685,000円の社員がいれば平均年収700万円になる訳ですから。

定額固定と見做し残業

この二つについて、混同して捉えている場合がありますが、実際には別の制度です。定額固定は本文に説明があるように〇時間分までの時間外手当を固定で支給。超過分は別途支給というのが原則です。

対して、見做し残業とは「見做し労働時間制」という制度の事を指します。内容としては、実際の労働時間に関わらず「〇時間働いた物とみなす」という物。会社が労働者の就業実態を把握するのが困難な場合等でも、その時間分の勤務を行った事として扱い、労働時間分の賃金を支払うという制度です。そして、定額固定残業の設定同様、規定された時間を超過した場合には追加支給の義務があります。

運用されるのは、労働者の実勤務時間を正確に把握するのが困難な職種の場合、または裁量労働として時間のコントロールを労働者自身が行っている場合などです。

定額固定と同様、実労働が設定の時間に満たなくとも支給されますが、裁量労働や労働時間の把握が困難という理由をから「見做し勤務時間の範囲内で勤務しているハズ」と解釈し、設定された手当額以上を支給しないと説明するなど問題ある運用をしている企業が多くありました。そして、問題視されるようになった現在も当時の制度をそのまま運用している企業がある事は理解が必要です。

※見做し時間労働は、法令上認められた制度であり本来の運用を適切に行っていれば、労働者にもメリットのある制度です。然し、上記のように問題ある運用をされる場面も多く運用は簡単ではありません。

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