
「未経験さんも大歓迎」と謳って求人を掲載する事は、どの企業でも良くあること。ですが、ほんとに未経験でも大丈夫なのか、気になりますよね?
結論から言えば、本当に未経験歓迎の場合、応募者数を獲得目的どちらの場合もありえます。ちょっとずるい感じもしますがホントです。
そんな未経験歓迎募集について、中小企業の立場から実態と解説。そして採用されるための対策、裏マニュアルまでぶっちゃけ話(笑)
未経験者さん大歓迎・・・の募集に応募しているのになかなか採用につながらない。そんな状況で悩んでいる方に向けた未経験者歓迎の求人を公開する企業の裏側です。
知っておきたいのは「誰でも良い求人は存在しない」という事実です。言い換えると、「未経験者さんも大歓迎!でも、仕事をお願いする人は選びたい。」ほとんどの企業はそう思っています。
- なるべく多くの人に会って、そこから人物重視で選んで採用したい
- そもそも応募者が少ないので、応募してくれるのであればどなたでも大歓迎
- 少しでもコストを抑えて採用して、社内で戦力として育てていきたい
『未経験者さんも大歓迎!』そんな企業の思惑は多種多様でもあります。上記のように代表的な物だけでも採用する側の思惑が違うという事が分かりますよね。以下で内容を掘り下げてみます。
未経験の方が歓迎される場合とその他募集の見抜き方

そもそも未経験者という言葉が何を指しているのか勘違いしないようにします。転介が募集を行うときに意識しているのは以下のような【未経験者さん歓迎】のワードです。
①実務未経験歓迎の本音 → 実務経験は無くとも必要な知識・スキルは持っていて欲しい
②業界未経験歓迎の本音 → 一定の社会経験を持った方を資質で判断したい募集
③未経験歓迎の本音 → 上記以外。企業や人事担当によって異なる。
①②はドンピシャな人材で無くとも、何となく企業が設定している要件があるような内容に見えませんか?そして、③に該当する募集の方が、受け入れの幅がより広い印象だろうと思います。その分、この場合で採用につながらない場合は、理由も様々なケースが考えられます。
今回はこのケースを中心に『未経験者さん歓迎』の募集広告について応募者さんが見抜く際のポイントを考えてみみたいと思います。
方法① 未経験歓迎求人は、職種及び会社の規模と給与のバランスで見抜く
最も明瞭な見抜き方と言えるでしょう。
社員を採用するという事は、そこに仕事があるからに他なりません。そして、お給料はその仕事の対価として支払われるものである以上、社員の誰の目から見ても公正でなくてはならないと考えべきものです。縁故や人事権者の好き嫌いでお給料が決められる会社でもない限り、採用時の給与が抑えられている事の理由が未経験者さんを対象としたものであるというのは納得いきやすいものです。
例えば、人事制度で良くある資格等級制のような担当すべき業務の難易度や達成度、行動特性などから等級で区分することで会社が期待する貢献度(実績)に応じて給与処遇を決定するなどの人事制度を導入している会社は多くあります。
当然、未経験者の方は任せられる職務が容易なものとなりますので、スタート時の等級が低くなるという理屈です。
実際の確認方法としては、自分の希望する企業が他の職種においても募集を行っているかなども確認する事で、より具体的に応募しようとする募集の処遇バランスが見えるのではないでしょうか。

転介が社員採用を行う場合でも、自社の就業規則に照らしながら他企業の同程度・同職種での募集内容は気にします。そして、それに応じた募集広告の文言を考えたりもするんです。当然、自分が住んでいる地域の給与相場も反映されますよね。
方法② 未経験歓迎求人を職種で見抜く
とはいっても具体的な職種名を取り上げていてはキリが無くなってしまうので、大枠の考え方になります。
転介が感じているのは、『募集広告で目にする頻度の高い職種』と『ニッチな仕事』の2点をポイントとした考え方。その他、ほぼ経験が必要とされないような職種も該当すると言えますが、それは対策を考えるまでもなく、応募をするか、しないかが基準になってしまうので省いて考えます。
募集広告で目にする頻度の高い求人とは何でしょう?いくつかのパターンがあるので、自分の希望に該当するかどうかじっくりと考えてみます。
例えば、営業職の求人と言うのは募集広告で目にする頻度の高い求人に該当すると言えます。例えば、不動産営業系の求人は、他の業界が冷え込んでいる時でも絶え間なく募集を打ち出しているイメージがありますよね。想像し易いとも思いますが、営業職は離職率も高く、その分採用を止める訳にいかないという側面があるからです。
事務補助・サポート系のオフィスワーク(データ入力系やテレフォンオペレーター)も比較的目にする機会が高い職種になります。こちらは、離職率が高い場合もありますが、経験が無くても対応可能な役割にまで作業的に業務を分解する事がしやすい為です。それでいて希望者も比較的多いため給与が低めだったり、非正規雇用での募集である事が多いというデメリットもあります。
では、ニッチな仕事ではどうでしょうか。
特定の業界、特定の資格や経験が求められる仕事では、そもそも対象となる人が少なくなります。その為募集を掛けてもなかなか人が集まらず、結果として『未経験の方を採用して社内で育てていこう』という選択肢も生まれやすい事が考えられます。
その先には、募集企業側も対象となる人が少ないことを理解していますから、選考においては少しでも求める役割や知識に近しい経験があるか否かなどを参考にする場合もあります。
未経験歓迎の落とし穴/採用されないのには理由がある?
求人に「未経験歓迎」と記載されているのに採用されなかった。
それは、職務経験以外で企業の求める人材層とギャップがあったという事になります。また、他の応募者さんとの比較で惜しくも及ばなかったという場合も考えられます。
どちらの場合も考えられる理由はいくつかあります。
まず、人材層とのギャップでは、どんな物が考えられるでしょう。
①企業が採用したいと考えている年齢層や性別とのアンマッチ
②企業と応募者で求めている物の価値観が異なる場合
③応募者の人材像が企業風土に合わないと思われた場合
未経験者採用に限った話ではありませんが、経験を優先しないにも関わらず採用を見送るという事から上記のような理由が想定されるのではないでしょうか。
実際に転介の会社で行われる採用活動に関しても少なからず上がってくる理由です。以下にそれぞれを簡単に取り上げてみたいと思います。
①企業が採用したいと考えている年齢層や性別とのアンマッチ
職業安定法や男女雇用機会均等法などから、年齢や性別を理由にした募集・採用の制限は禁止されています。ですが、現実には採用選考において、一切考慮されていないなど誰も信じてはいないのではないでしょうか。
未経験の方であっても社員採用をするという事は、今後の会社を構成する一員となる訳です。年齢や性別を理由に選ぶ事はなくとも、選考が行われる中で材料のひとつになる事は避けられません。
例えば、若者向けのイベント企画会社さんの営業職に、総務一筋でやってきた50代後半の応募者さんが来たとしたらどうでしょうか。採用の可能背もありますが、他にも応募者がいた場合にはかなり苦戦することが容易に想像されると思います。
また、企業側が意図しなくとも男性・女性のいずれかに就業者の性別が偏る職種というものもあります。扱う商品や仕事そのものの特性等です。そういった職種では、職場の雰囲気や当人の働きやすさ等を考慮しながら選考が行われるため、他の方との比較で採用を見送られたという事も考えられます。
②企業と応募者で求めている物の価値観が異なる場合
HPや求人広告だけでは、その企業が本当に求めている詳細な人材像は理解できないかもしれません。
ですが、営業活動最優先で、会社をより大きく成長させたいと募集を行っている企業の募集に対して、既定の就業時間のみで、決められた商品を決められた取引先に案内するようなルート営業を希望する方が応募した場合。
他にもデパートのような丁寧な接客と高級感を重んじる店舗の募集に、威勢の良い市場の仲買さんのスタンスで面接に行ったらどうでしょうか。またその逆も考えられます。
どちらの場合も、面接の結果が採用につながるとはとても思えません。
仮に採用に辿り着いたとしても、程なくして職場(又は人材)に違和感を感じ離職する事が頭によぎるなんて事も想像に難くありません。
③応募者の人材像が企業風土に合わないと思われた場合
一見すると②と変わりないように感じるかも知れませんが、ここで言う企業風土は突き詰めると人間関係を指す事が多くあります。
人事担当として面接をしている時にも「人間関係で・・」という言葉はよく聞かれます。そして、企業の人事担当や部門の上司は、同じことを企業風土という言葉で表すことも良くあります。人事担当としては、それを人間関係に問題の起こりやすい企業風土であったり、問題ある人間関係を改善しようとしない企業風土と認識する事が多いのではないでしょうか。
本来、そのような問題が起こる事は好ましくない状態と言えますが、簡単に改善できる問題ばかりでもない為、これから入社される応募者が職場の状態に適応できるかという方向で考えがちでもあります。
未経験歓迎の募集に応募する場合の対策は?
人事担当の立場から見れば完全に裏技・裏マニュアルと言われてしまうかも知れません(笑)。ただし、あくまで転介の主観である事を理解して参考程度に読んで頂ければと思いす。
対策するには、なぜ自分が採用選考から外れてしまったのか。それを知る必要があります。応募時は「きっと採用されるだろう」と思っていた募集から外れてしまったとした場合、次のような内容に思い当たる部分は無いでしょうか。
①年相応の社会常識を疑われるような状態
②募集内容に対して興味を持っているように感じられない
③未経験歓迎だからと安易に考えすぎている
それぞれについて取り上げ、なぜ人事担当から敬遠されたのか解説を付けてみます。
①年相応の社会常識を疑われるような状態
【未経験歓迎=すべてのハードルを下げている】ではありませんので、常識的な面を疑われるような事のないように注意します。
新卒や第二新卒の世代であれば、社会人としてのマナーが多少怪しくとも笑ってすまされるレベルですが、30代に入ってから同じ姿勢のまま面接を受けては常識を疑われます。実際に時々お会いしますが、未経験者歓迎の募集に応募された30代・40代の方の回答が、20代の若者が将来を語るような素振りである時などは「もう少し現実を踏まえて考えて欲しい」と感じてしまいます。
自分が応募している職種、また自身の年齢によって回答すべき内容も異なってくるわけです。未経験といえども、面接官の問いかけに対して自分の経験がある範囲の業務や対応を面接先の企業の募集に置き換えて伝えるような工夫は必要かもしれません。
そして、応募資料の取り扱い等や立ち居振る舞いは、どんな企業・職種であっても最低限見直して面接に臨むようにしましょう。
②募集内容に対して興味を持っているように感じられない
募集企業の側からみると自社に興味が無い方、自社に興味を持っている方、二人の人材を比較すれば採用したい人材は一目瞭然です。
未経験歓迎の文言と募集待遇だけで応募してきたという印象を持たれては、採用される確率は大幅に下がるでしょう。どんな人でも、自分が興味のある事とそうで無いことに対する対応は全く違うはずだからです。そして、応募者さんが募集している職務内容に興味を持っていないという事は、その仕事(業種)に対しての苦労も想像できないのではないかと考え、不安を増長する事にもなるのです。
そこで、未経験であればこそ転職希望者の本気度が知りたくなるのです。
極端な例かも知れませんが専門職・技術職にアラフォーからチャレンジする実務未経験の転職者の方もいます。設計やプログラマなどが多いですが、本気でその仕事に打ち込んでプロになろうとしている人はどのくらいいるのだろう・・と転介も考えてしまいます。
未経験者歓迎の技術職の多くは、サポート業務からスタートする若年層の方を想定した将来に対する投資のような物。そこでベテラン社会人さんが「ゼロからの出発のつもりで頑張ります」と申し出て来たところで、他の応募者と比較して何のアドバンテージにもなりません。
では、どうするか。
アプローチする方法としては、いくつかの事が浮かびます。
未経験ではあっても実務に対応可能であるという可能性を示す事。これは、趣味や職業訓練等で基礎的な物を身に着け、実際に自分の現在の能力を示す事が出来るポートフォリオのような物を選考資料に添えて提出する事で示せる場合もあります。
ただし、ほとんどの場合で実務経験者とは差がある事が明確ですから、それを補完する為の自己PRも添えるのが得策です。応募先の企業や部門に必要な経験値・人材がどういう物であるかを事前に下調べする事によって少しでも見えてくるはずです。
やはり事前の対応は採用の確立を高める事に繋がります。
③未経験歓迎だからと安易に考えすぎている
実は意外と多いかも知れないのがこれ。
何に対して「安易」なのかと言えば、仕事そのものになります。
例えば、『経験不要でスタートできる一般事務募集』なんて求人をみた事はないでしょうか。転介の会社でも時々募集する内容です。実務経験の有無に制約は無いのですが、面接官に「ウチの会社の仕事を安易に考えすぎているんじゃないか」と受け取られ印象を悪くする場合もあります。
そう思われる事が無いように面接時の受け答えはしっかりと考えた方が無難です。未経験者歓迎の一般事務募集で遭遇するであろうパソコン操作(ワード・エクセル)に対しての質問を例に解説と対策を取り上げてみます。
Q.ワード・エクセル等のパソコンソフトは使えますか?
A.パソコンは使った事がありますが、ワード・エクセルは経験がありません。教えて頂きながら覚えていければと思います。
実はこんな回答ってかなり多いんです。
面接の場では、その回答に対して直接否定的な事を言われる事は無いかもしれませんが、心の中では『お金をもらって仕事をしながら職場で勉強するつもりなのかな』と受け取られ印象を悪くしている可能性もあります。
また、志望動機なども単純に『未経験歓迎と有りましたので・・』ではあまりにも露骨です。未経験OKであるからこそ『入社後に仕事を覚えてもらう事自体に問題はなさそうだ』と思ってもらわなくてはなりません。
それらを踏まえた回答として以下のような物はどうでしょう。
【回答例 1】
ワード・エクセルの実務経験はありませんが、パソコンを使った入力の経験はあります。これまで、オフィスソフトは使用する機会がありませんでしたが、今回の転職を機に身につけたいと思い勉強を始めたところです。
【回答例 2】
使用経験はありません。仕事としてPC入力等もあまり機会は多くありませんでしたが、苦手意識等はありません。ワード・エクセルに関しては未経験となります。ただ、前職の〇〇では伝票の入力程度はありましたし、顧客や業者さんとの電話対応なども行っておりました。今回のお仕事は未経験でも応募可能な一般事務という事でしたので、ワード・エクセルを使った業務以外もあると考えましたが、その部分では前職の経験も活かせる面があるかと応募致しました。
回答例1・2はニュアンスが異なりますが、どちらも前向きな姿勢を感じさてくれるものだと思います。回答例1では「勉強を始めたところです」という事で、行動力があると思われると同時に、この後掘り下げた質問を受けても「まだそこまでは勉強が進んでいない」と逃げ道も用意しています(笑)。
回答例2は、出来ない事を明確にした上で他の経験や対応で穴埋めする事が出来ると相手に感じさせる回答になります。PCはこれから覚えて貰う、そして他の部分で経験がある事から筆よ言う最低限の指導で経験者と変わらない対応が期待できる。と思わせる事も可能です。
当然、1・2の中間的な表現もあるでしょう。上記にも記載しましたが、企業は入社後の姿も選考の大きなポイントとして捉えていると考えれば面接官の不安を払拭する材料になるので、場面や相手によって使い分けます。

今回取り上げたお話はほんの一握り。職種・会社規模・地域によっても大きく差があるはずです。そして、何より転職希望者さん自身の個性は他の誰とも異なるもの。
少しづつ採用市場の考え方も変わってきていると思いますが、それでも採用面接はごく限られた時間でお互いの事を知り合い、採否を決定する大きなポイントである事に違いはありません。面接に臨むには、出来る準備を行い後悔の無い対応をしましょう。