
就職活動の中で大きな悩みとなることもある内定辞退。内定連絡は嬉しい知らせであると同時に、仮に辞退を考えていた場合にはストレスの素にもなり得ます。更には、一度受諾した企業に対し撤回を申し入れる場合などは大きな悩み以外の何物でもありません。実際に判断を迫られる立場になった時、貴方は正しい選択が出来るでしょうか?
この記事で取り上げるのは以下の内容です
- 内定通知を受けた企業へ内定辞退の連絡方法とマナー
- 内定条件通知の受諾後に取り消す場合(入社辞退)の対応
- 辞退する事によって考えられるリスクや問題
必死で取り組んだ就職活動も必ず苦労が報われるとは限りません。
新卒での就活、転職活動を問わず、本命の会社・業界から内定をもらうのは容易ではありません。
しかも、第一志望の企業から見事勝ち取った内定だったとしても、やむを得ない事情で辞退せざるを得ない事もあるでしょう。更には内定受諾後の状況変化で辞退の申し入れが必要となる場合もゼロではりません。
ただでさえ容易でない就職活動。
そこには常に妥協や後悔と隣り合わせの選択を迫られる場面も付きまといます。
採用試験を受けた企業からの内定連絡に対して、内定辞退の意思表示をする場合。一度は内定を受諾した企業に対して、改めてその取り消し(辞退)の意思表示をするする場合。
諦めていた第一志望の企業から内定連絡を受け、既に内定受諾してしまった企業に受諾取消しの連絡を入れたい場合もあるでしょう。
就職活動におけるリアルな現実に直面した方に向けて解説してみます。
定受諾済みの企業に対して、内定辞退の申し入れを行ってでも希望に近い企業への道を選択すべきか?そして、その選択は先々の自分の社会人生活に影響することはあるのか?
そもそも内定辞退は許される行為なのか?
仮に内定受諾を撤回して、同じ業界の異なる企業に就職したら、法的な責任を求められたり入社後に情報が回ってマイナス方向での人事評価が残るんじゃないか。そんな心配まで尽きる事は無いでしょう。
不安と疑問、その回答、最後の手段も準備して中小企業の人事担当の立場で解説してみます。
内定受諾は雇用契約を締結したのと同じ状態
入社選考試験を受けた後、企業の選考に通過した場合には、企業から内定通知を受ける事となると思います。
そこには、採用時の条件や入社手続き等に係る案内が記され、応募者としては、その内容に承諾するかの判断を行うことになります。
当然、希望があったからこそ選考試験を受けている訳ですが、選考試験前に知らなかった内容等から気持ちに変化が生じる場合、業務や会社そのものが想像と異なるものであった場合など、折角の内定といえども内定辞退の返答を行うこともあるはずです。
内定通知に対する返答には期限がある事が多いですが、焦らずに内定条件通知をよく確認し返答するようにしましょう。
内定受諾と内定辞退
企業から提示された条件を受け入れ、入社承諾書を提出(入社の意思表示)すれば自分の立場は、応募者から内定者となります。
そして、内定受諾後の関係は法的にも雇用契約締結後と同じように扱われます。
企業と従業者が取り結ぶ雇用契約には法的拘束力が伴います。
それは、主として労働者のために定められている内容が殆どですが、労働者の側にも遵守すべき内容が当然あるわけです。契約を取り交わしている者同士、どちらか一方の勝手な都合や解釈で容易に破棄が認められては困ります。
企業説明会や採用面接、採用後の教育研修等を含めると会社としても非常に大きな労力をかけて進めているのが人材採用です。そして、実際に応募された入社希望者とは、お互いを理解しあい、合意の上で内定状態に至る訳です。
いっぽうで、内定辞退は『御社への入社を希望して採用選考試験を受けましたが、入社の希望を取り下げます』という意思表示です。
その時点では受諾や契約の前段階ですから、選考通知に返答する形での内定辞退が大きな問題になることは殆どありません。
ただし、内定通知に回答期限等の記載がなく、入社手続きや勤務開始日の案内だけが記載されているようなものであった場合、応募者が入社希望である事を前提に採用通知が作られている訳ですから、内定辞退場合、連絡は採用期日より2週間以上の余裕をもって極力早く申し出るようにします。

やはり、内定受諾は契約当事者にとって大きな節目。少しでも、受諾することに不安があるなら、正直に人事担当に相談するのも一つの方法です。『内定受諾の回答時期をもう少し後にしてもらえませんか?』と申し出るという選択です。
内定を辞退すると怒られる?
就活中の人の中には、「内定を辞退したら怒られるのではないか?」「人事担当が自分の事をほかの企業にも話すのではないか?」そんな心配をする人もいるかも知れません。
その答えは、YesでもありNoでもあります。2つの疑問にQ&A形式で答えてみます。
Q. 内定を辞退したら怒られる? |
A. 内定辞退で怒られる事は殆どないと言えます 内定辞退の連絡で企業の人事担当に怒られると考えるのはナンセンス。 もしも、怒られる事があるとすれば、入社式ぎりぎりになってからの連絡や内定辞退の連絡の仕方が非常識な物であった等の場合など、怒られても仕方がないと思われる他の行為がある場合に限定されると理解してください。 丁寧な対応、常識的な対応で内定を辞退して怒られたとすれば、そのような会社に入社しなくて良かったと考えるべきと言えます。 |
Q. 内定辞退した自分の悪い印象がほかの会社にも流される? |
A. 常識的にはありません 人事担当は、個人情報や企業情報の取り扱いにおいても十分に教育を受けた専門職です。応募者の情報は、採用活動やその判断以外の目的で使用も露出も認められません。 まして、内定辞退で本人に不利益を与える様な行為は、法的にも社会常識的にもあり得ません。 |
基本的には、過度な心配をする必要はありません。
しかし、稀に人事担当としての自覚がない、適性がない社会人がいるのも事実です。そういった輩が、応募者や内定者に許されざる対応をとる事があるのは悲しい事実でもあります。
就職活動をされる皆様の立場では、そんな企業に当たらないような情報収集と不適格な人事担当から自分の身を守るための毅然とした態度・対応も必要になると覚えておきましょう。
内定受諾の状態、始期付解約権留保付労働契約ってなんだ?
内定を受諾している状態の事を始期付解約権留保付(しきつきかいやくけんりゅうほつき)労働契約と言います。始期付解約権留保付労働契約とは、労働契約の開始時期が定まり契約が成立しているとみなされる状態。
契約者の一方である会社からは、対象者において入社時期までに内定を取消すような事態が起こった場合、労働契約を解約する権利があるという契約状態です。
ただし、内定状態はすでに雇用契約に対する制約が発生している状態とみなされますから、応募者だけでなく企業側にも同様に雇用に対しての義務は発生しています。
企業側からの内定の取り消しは、それに見合う理由がある事が大前提にもなります。
これらを理解すると内定通知に対する辞退と内定受諾後の辞退では、理屈上でも気持ちの面でも非常に大きな差がある事が分かります。
次に内定通知を受けた後、辞退する場合の企業に対するルールやマナーを考えてみます。
内定通知に対する辞退の連絡方法
入社選考試験を受けたからといって、契約締結の権利が採用側に一任されるという事はありません。
あくまで採用側と応募側の同意によってのみ次の関係(雇用)に進むことになりますので、内定通知を受けた後で辞退するという選択肢も通常にあります。
しかし、その後の自分の社会人生活や気持ちの切り替えのためにも後ろめたい気持ちを残さず、マナー違反にならないような内定辞退連絡を行いたいところです。
内定辞退の連絡は、以下の内容を考慮した誠意ある対応がベターです。

人事採用担当者も人間です。
丁寧な対応で内定辞退の申し入れを行ってきた人に高圧的な対応や無理な引き留めはしないでしょう。仮にそんな会社に当たったとすれば、それこそ内定を辞退して正解だったと割り切るのが正解と言えるかも知れません。
内定辞退連絡における電話連絡・文書通知のサンプル
それでは実際に電話で内定辞退を申し入れる場合はどのように行うのか、簡単な文章のサンプルを掲載してみます。
確かに電話連絡で人事担当者に直接辞退を申し入れるのは大きなストレスかも知れません。しかし、これから過ごす社会人としての自分に引け目を作らない為にも、可能であれば直接連絡を入れる事をお勧めします。
『お世話になります。私、この度内定を頂戴しました●●大学●●学部の[自分の氏名]と申します。人事部 採用担当の××様はいらっしゃいますか?』
=電話を替わってもらう=
『この度は、内定のご連絡をいただき誠にありがとうございます。
●●大学●●学部の[自分の氏名]です。検討させて頂きました結果、大変申し上げにくいのですがこの度は内定を辞退させていただきたく、ご連絡を差し上げました。』
=辞退理由を聞かれたら=(聞かない企業も多くなってきました)
『実は他企業からも内定をいただき、自分の適性や希望職種を踏まえ検討いたしました結果、他の企業に入社を決意しました。選考に貴重なお時間を頂きながら、このような事大変申し訳ございません。本来であれば直接お詫びに伺うべきところですが、電話でのご連絡となり恐縮です。それでは失礼いたします。』
注意したいのは、伝える事に必死になりすぎて電話口の相手に連絡内容が理解されない様な事にならないようにする事です。
適切に伝わっていなかった場合、その後も辞退したはずの企業から各種手続き等の連絡が入る事態になりかねません。
文書で内定辞退を申し入れる場合
文書で申し入れる場合のメリットは過度なストレスを感じる必要がない事、申し伝えたいことが確実に相手に届くという事になります。
ただし、最低でも入社の想定期日よりも2週間の猶予をもって辞退の意思表示をするという点では、入社日間近になっての申入れには注意が必要です。
郵送とする場合には、確実に企業に受け渡しが行われた確認の出来る特定記録郵便等を使用する方が良いでしょう。
株式会社●●●●
人事部 ××様
お世話になります。採用面接を受けました●●大学●●学部の[自分の氏名]と申します。
この度は内定を頂き、誠にありがとうございます。
誠に嬉しいお知らせでは御座いますが、内定を辞退させて頂きたくご連絡を差しあげました。貴重なお時間を使い選考していただいたにも関わらず、ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。
本来であれば直接お伺いしてお詫びすべきところ、文書(メール)での連絡になりますこと何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。××様をはじめ、選考に関わってくださった皆様の丁寧な対応には心より感謝しております。有難うございました。
末筆になりましたが、貴社の益々の発展を心よりお祈り申し上げます。
==以下 氏名・連絡先を記載==
他にも、郵送よりも簡易的な方法ではメールでの申入れもあるでしょう。
しかし、稀な例かも知れませんが見落とされるリスクや配信エラー等の問題はあります。メールで申入れを行った際には、念のため就活サイト等のメッセージ機能等でも企業宛にメールを送った事を連絡しておく方が無難です。
ただし、確実に相手に伝わった事を確認したくても、メールの開封確認機能はあまり印象が良くないのでお勧めしません。

もちろん、企業にとって良い知らせではない【内定辞退】の連絡ですが、思っているよりも事務的な対応で拍子抜けしたという人もいるかも知れません。
実際に企業の人事担当として考えれば、無理な引き留めこそ会社にとっての大きなマイナスであることを理解しているのです。

時には、『本当の内定辞退の理由を聞かせてください』と言われる事もあるでしょう。しかし、その理由が引き留めである事は殆ど無いと思ってください。それは、辞退理由を次の採用に活かしたいという人事担当の業務改善活動に他ならないからです。